ロシア人しか知らない本当のロシア (日経プレミアシリーズ)/日本経済新聞出版社
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<北欧女子大生が語るイギリス男の欠点からの続きです>
「次はロシアかな?」
ぼくが口を開くと、彼女は唇をすぼめた。
「ロシアはヨーロッパではありませーん」
キュッとキューバリブレを呷る。
「そうなの? アジア人からしたら同じようなものだけど」
彼女の眉間に一本の筋が入る。
「は? 全然違うし。むしろアジアじゃないの?」
そうなの? 確かに中国や日本の隣国ではあるけれど。
「うん。アジアにあげるよ」
え……丁重にお断りしたいのです。
中国と韓国と北朝鮮だけでもお腹いっぱいだというのに。
この上プーチンまで来たらアジア脱出したくなっちゃうよ。
そういえば日本の隣国って一筋縄ではいかない方ばかりじゃないか。
それとも隣国とはどこもそういう存在なのかもしれない。
「でも聞いて! ロシア女!」
彼女の鼻に皺が寄った。日に焼けた肌がアルコールでさらに赤らんでいる。
「この前ロシアの女の子と話していてとっても驚いたの! 思考回路が全て金! そして自己中! 全ては男が払うと思っているし、いつも金持ち探してるし、男イコール金の話だし。信じられない! つまりビッ○ってことなんだけど」
奢られるのが嫌いなのだ。
彼女とぼくは年がかなり離れているし、彼女は大学生でぼくは社会人だ。
だから当然全部おごろうとして、彼女が財布を取り出そうとしたときに、
——キミはお金を払うことができない——(全てぼくが払うから)
格好つけて頭をかいた。
気の利いたセリフが決まったと思った。
しかし彼女はむっと唇を曲げたのだ。
——わたしはあなたのペットじゃないの。あなたと対等な立場でいたいの——
割り勘か、交互に払うか。
そんな決まりができた。
この旅行も宿は割り勘。ご飯は交互に払っている。
彼女は決してお金持ちではない。
ヨーロッパからアジアまでLCCで来た普通の貧乏大学生だというのに。
「ロシアの男は?」
「自己主張強いよね。だからロシアは文豪多いよね。文学的なところがいいね」
彼女は本を読むのが大好きでドストエフスキーとハルキムラカミをこよなく愛しているのだ。
あるいは北欧女子大生と裸のお付き合いをできたのは村上春樹氏がねじまき鳥クロニクルを書き上げて下さったおかげかもしれない。
やれやれ。パスタでも茹でようか。
「とにかくロシアはヨーロッパとかなり違うから」
これはあとから知ったことだけど、大抵のヨーロッパ人はロシアに良いイメージを抱いていないし、自分たちの仲間だとは思っていないようである。
同じ白人でもこうも違うのだ。
(続く)
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北欧女子大生が語るロシア女とロシア男
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